なぜエンジンには種類がいくつもあるの?気筒数は種類で何が変わるのか解説
気筒数がいくつもある理由
エンジンの基本はシリンダーという「筒状」のもので構成されています。このシリンダー(筒)の中をピストンが上下往復運動することで、ピストンの下に結合されたクランクシャフトという棒を回し、その回転力が変速機を経由して駆動輪に伝えられます。
単純に考えればこのピストンを大きなものにしてやれば出力は大きくなるはずです。しかし、例えばピストンを倍の大きさにするとそれだけピストンが重くなって、ピストンのスピードを上げることができなため思っていたようなパワーは得られません。そこで、ピストンを大きくするのではなく大きさはそのままでもう一つ同じピストンを追加してみましょう。今まで一人で棒を回していたのが二人で一緒にまわすようなものなので出力は上がりますよね?また、1気筒当たりの排気量は400cc〜500ccが適正な範囲と言われ、600ccを超えてしまうと熱に変わって失われてしまう部分が多くなるので非効率です。
このため、排気量を増やして出力を上げるためには気筒数も増やしています。そのため、気筒数はそれぞれモデルによっても異なっています。
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エンジン形状に種類がある理由
次にエンジンの形状の違いについてそれぞれのエンジンの構造から解説をしていきます。
直列型エンジン
シリンダーを横一列に並べたシンプルな形状のエンジンです。エンジンルームのサイズが決まっているためどんなに押し込んだとしても直12エンジンまでで作ることは直12までは可能ですが、そうするとエンジンが長く重くなってしまい車のエンジンルームに収まらなくなってしまうので、現在の技術の現実的なものとしては直列6気筒までとなります。
主流は直4と直3
現在、多くの乗用車で使用されているのは回転バランスの良い直4で1L〜2Lクラスの車に搭載されています。直3は直4気に比べると安っぽい振動が出がちで滑らかさに欠けることから軽自動車やリッターカー用が中心でしたが、最近はBMWのようにターボと組み合わせて1.5Lのプレミアムコンパクトクラスにまで拡大する例も増えてきました。
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今や少数派の直2と直6
直2は振動が大きいため長い間、自動車への搭載事例はなかったのですが、近年フィアットがターボと組み合わせて新開発の直2をデビューさせ話題になりました。直6はかつてはちょっと高級な車によく搭載されていました。それぞれのシリンダーが発生する振動がお互い打ち消し合うことから振動が少なく「完全バランスのエンジン」とも言われていたからです。
しかしエンジンがどうしても長くなってしまうのでエンジン横置きのFF車には横幅を取り過ぎるので搭載しづらく、また縦置FR車であっても安全性基準が厳しくなって、衝突した際の「つぶれしろ」を確保することが重要となったので現在の量販メーカーではBMWのみとなってしまいました。
V型エンジン
直6は、いわば6人が横一列に並んで順番に1本の横棒を回しているような状態。このままだと縦に場所を取ってしまうので、棒を半分にして3人ずつの2列で向かい合って棒を回している、これがV型6気筒エンジンです。6気筒以上の自動車用エンジンは長さの関係でV型を取らざるを得ません。では、V型エンジンの種類を見てみましょう。
V8
歴史的にみればV8の方がV6よりも古く、1900年代初期には既に実用化され乗用車に搭載されました。1930年代にV型8気筒を搭載した大衆車をフォードがデビューさせたことで、アメリカでは非常にポピュラーなエンジンになりました。相反して、ヨーロッパでは高級車に搭載されることが多くなりましたが、それは現在でも変わっていません。
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V6
V6は直6に比べて振動が多くなってしまうことと、部品点数が増えてしまうことから長らく主流ではなかったのですが、オイルショック以降、アメリカ車でV8の設計を元にV6を製造することが増えて、一気にポピュラーになりました。エンジン長が短く、縦置FRでも横置FFでも搭載できることからメーカー側にも好都合だったようです。国産車でも現在は直6からV6への移行が進みました。
V12
完全バランスと言われた直列6気筒を2列、V字型に並べたもので、滑らかな回転フィーリングは超高級車やスーパーカーにふさわしいものでした。しかし燃費の悪さや高い製造コスト、なにより過給器の技術が進化したことでV12でなくてもハイパフォーマンスが得られるようになったことから現在、採用しているメーカーと車種はごく限られたものになっています。
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水平対抗エンジン
クランクシャフトと中心にして両側にシリンダーを水平に(180°)に配置したものです。V型と似ていますが、水平対抗では対になったピストンが必ず同じタイミングで上昇と下降をする点が異なっています。左右のピストンが同じタイミングで下降してくる様子が、ちょうどボクシングの打ち合いのように見えることから、「ボクサーエンジン」とも呼ばれています。水平対抗には優れた振動特性や、エンジン高を押さえて低重心化できるといったメリットがあります。
一方で横幅が広くなったり、排気管の取り回しが複雑になるなどのデメリットもあることから、今でも水平対抗エンジンを採用しているメーカーは日本のスバル、そしてポルシェだけとなっています。
まとめ
いかがでしたでしょうか。自動車が誕生してから、これまでにも様々な形式や気筒数のエンジンが登場してきました。気筒数の違いは出力を維持しながらスピードアップを計るため、形状の違いはエンジンの性能をアップさせるための技術の進化によって様々な形状が誕生しました。
最後に現在のエンジン開発の傾向は、ダウンサイジングや共有化が進み種類はかなり絞られている傾向にあるだけでなく、最近では大ヒットを記録している日産ノート「e-power」のようにエンジンを発電のためだけに使用するということも始まり、これまでとは全く異なるエンジンの進化が行われていくことが期待されます。その一方で、メルセデス・ベンツがおよそ20年ぶりに直6エンジンを復活させるという効率一辺倒ではない方向性を示すニュースもあったりもするので、今後の各メーカーのエンジン開発についても目が離せない展開になりそうです。
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