【ポルシェ911の歴史】マニュアルギアボックス【連載記事】

ポルシェ911の、50年を超える輝かしい歴史の中で主力となったギアボックスはマニュアルギアボックスです。ここ数年はデュアルクラッチ式セミオートマチックギアボックスであるPDKがその主力にとって変わろうとしていますが、パドルなどにて積極的にシフト操作を行い、目的とする加速や減速をドライバー自身が選択して行うという点ではオートマチックギアボックスよりも、進化したマニュアルギアボックスと考えることも出来るでしょう。

ポルシェ911マニュアル

ポルシェ911に最初に搭載されたマニュアルギアボックスはレースカーであるポルシェ904及び906用のものを流用して開発された901/1型ギアボックスです。このギアボックスの特徴は、1速が左手前に位置する点です。レースでは通常、発進時のみにしか1速を使用することはないことと、レース中にミスシフトしてオーバーレブすることを可能な限り予防する意味でこの位置にレイアウトされました。

1968年のBシリーズからは901/50型5速マニュアルも選択可能になりました。ただし、911Lと911Sには5速マニュアルが標準ながらも、911Tでは901/03型4速マニュアルギアボックスとされ、5速マニュアルについてはオプション扱いとなっています。

ポルシェ911マニュアル

1969年のCシリーズ及びDシリーズからはギアボックスは911/01型へと変更され、1971年まで搭載されました。

その後、1972年モデルからは有名な「糖蜜をスプーンでまぜるような」もしくは「「熱いナイフでバターを切るような」フィーリングとも称された915型ギアボックスへと変更されました。このギアボックスの独特なフィーリングはポルシェ社製のシンクロメッシュが生み出したものともいわれています。

915型ギアボックスではリバースの位置は5速の下に位置しています。このギアボックスはType930 911となるビッグバンパーの時代に入っても継続して搭載され、1987年にゲトラグ製のG50型に移行するまでの長きに渡り採用されました。915型自体も915/03型、915/72型、915/50型などのバリエーションがあります。これらはギアボックスのケーシングへの刻印にて確認可能です。

Type930 911ターボには915/50型を改良した930型4速マニュアルギアボックスが搭載されています。

ポルシェ911マニュアル

915型の後を継いだのがゲトラグ製のG50/00型マニュアルギアボックスです。リバースの位置は左上へと変更されました。このポジションに入れる際にはシフトレバーを押し下げながら左上へとシフトすることで選択します。

シンクロが強化されたことでターボの大トルクにも耐えることが出来るようになり、Type930 911ターボ最終年である1989年モデルのみ、G50/50型5速マニュアルギアボックスが設定されました。

ポルシェ911マニュアル

1989年にType964 911カレラ4が登場するとG50型ギアボックスもそれにあわせて4WDシステムに対応する改良を行い、新たにG64/00型ギアボックスとなって登場します。その後、ラインナップに追加されたRRのカレラ2ではG50/03型5速マニュアルギアボックスが搭載されました。

Type964 911では、シフトレバー周りの形状もフロントへのドライブシャフトを通すために高くなったセンターコンソールに対応しただけではなくシフトストロークも短縮されており、以前よりも素早いシフト操作が可能になりました。

G50型ギアボックスはType964 911の時代を通じて用いられ、カップカーとRSにはG50/10、ターボにはG50/52が搭載されています。これら全てのモデルが5速マニュアルとされ、4速マニュアルは姿を消しています。

ポルシェ911マニュアル

6速マニュアルが登場したのはType993 911カレラからです。RRモデルにはG50/21が、カレラ4や、フルタイム4WDとなったターボにはG64型を改良して搭載しています。シフトレバーは6速にあわせてシフトパターンの刻印は変更されていますが、ノブ自体の形状はType964用とほとんど同じです。

Type996の時代には前進ギアについて6速の設定が標準化されました。ギアボックスはRR用、4WD用を含めて全面的に改良され、水冷化されたM96型エンジンとを組み合わせるG96型へと進化しています。

ポルシェ911マニュアル

車体形式の下2桁を用いたギアボックスのネーミングはType964 911カレラ4に搭載されたG64型から始まり、Type996ではG96型とされました。Type997でもそのネーミングは踏襲され、前後期型共にG97型ギアボックスが搭載されています。その点から考えれば、Type993では専用のギアボックスが(開発されていた可能性はありますが)提供されなかったことがわかります。もし提供されていたらG93型となっていたかもしれません。

ギアボックスのネーミングも最新の991型ではまた変化しています。PDKのケーシングを用いて開発された7速マニュアルギアボックスのコードネームはMT11となりました。

筆者はType993 911ターボとType964 911ターボ3.6を乗り比べたことがありますが駆動方式の違いからか、シフトフィーリングも異なっていました。マスターシリンダーの劣化などもありますので一概には言えませんが、ギアの入りやすさはターボ3.6の方が良好に感じました。ただし、使い勝手という点ではType993 911ターボのG64/51の方が6速でもあるため、市街地での低速走行では2速でカバーできる範囲が広く、Type964 911ターボ3.6のG50/52型よりも快適でした。G50/52型では場合により1速へのシフトダウンも必要だったからです。

また、クラッチの踏力もType993 911ターボ以前と以降では異なり、それほどの踏力が必要なくなったのも印象的でした。

 

*注:ギアボックスの登場年などは記事参照元をベースに各種資料や書籍を参考に記載しましたが、仕向地などにより一部が異なるケースもあります。

 

記事参照元:Total911

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